味覚の危機2008年05月06日 22時56分

昨日のブログに晩飯はもっぱらご飯とオムレツと描きましたが、さすがに毎晩それだけでは淋しいので、何かご飯のお供になるものをとスーパーを物色していると、餃子を実演販売しているおじさんがなぜかイカの塩辛も売っているではないですか。

ちょっと考えればこの時点でおかしいのですが、イカの塩辛に目のない僕はついふらふらとおじさんの方に。
「甘塩でゲソは入ってないよ」と言われて差し出された試食用のサンプルを口に含むと・・・。

味の素の味がする・・・!

イカのワタの風味はほとんどなし。
おそらく人工的に調合されたそれっぽい調味液に浸されたイカの身なのでしょう。
身自体も不自然に柔らかい。
色も妙にきれいなピンク。

上手い不味いの問題以前に身体に悪そうなのですが、試食してしまってからやっぱりいりませんと言えないのが悲しい日本人の性。
100g@480という結構な値段のものを買う羽目になってしまいました。

炊きたてのご飯と一緒に食べてみましたが、ちっとも美味しくありません。
口の中に化学の後味が残るだけ。

別に不味い塩辛があるのは仕方がないと思うのですが、不幸なのは子供がこういうものが塩辛だとすり込まれてしまい、イカのワタの風味が活きた本当に美味しい塩辛を不味いと感じてしまうことです。

巷間よく言われることですが、僕も最近の日本人の味覚はおかしいと思います。
僕は決してグルメなんぞではありませんが、小さい頃から母や祖母が作ってくれる昔ながらの家庭料理を食べて育ったので、異常な味覚をしてはいない自信はあります。

例えばラーメン。
人気店のラーメンは大抵臭くて食えたものではありません。
最近流行りの魚介系のつけ麺など、煮干しを囓るよりも煮干し臭くて、ギョッとします。
一方で安売りチェーンは味の素と食塩の水溶液。
仮に僕に子供がいたとしたら、怖ろしくてとても食べさせられません。

とにかくやたらと強烈な香り(たいていの場合僕には臭いと感じられますが)のものが好まれるような気がします。
味蕾が退化ないしは破壊されているから、刺激が強くないと感じることができないのでしょう。

我が家のみそ汁は常に鰹節から取っただしで作られていましたし、例えば春先には独活の酢みそ和えとか蕗の煮浸しとかを普通に食べていました。
そういう繊細な香りに触れることなく、小さい頃から人工的な味覚に馴らされているから、むしろそちらの方が正しく美味しいと感じられてしまうのでしょう。

中国産の冷凍餃子が云々とか騒いでいますが、そもそもそんなもの食うなよ、食わすなよ、と思います。
僕みたいな薄給のチョンガーが一人淋しく食っているのならともかく、親が子供に食べさせるものでは決してありません。
安全性がどうとかいう問題ではなく、食についての感性を育てるということにあまりにも無頓着だと思います。

食は文化の根幹を成すものです。
愛国教育とかいうのなら、まず日本独自の食文化を教えろと言いたい。
そうすればみんな健康になって、一石二鳥です。

他人様のことはともかく、僕が子供を持つことになったら、ハンバーガーなど食わせず、煮物が好物な健全な味覚の人間に育てることがまず一つの大きな目標です。