【宝塚】月組東京特別公演「春の雪2012年11月03日 11時32分

原作は三島由紀夫の同名作品。
僕は三島は読まず嫌いをしているので、もちろんこの作品も読んだことはないのですが、作品自体も良くできていましたし、出演者たちの人物造形も大変素晴らしかったです。

明日海りお(みりお)が演じる松枝清顕は、漱石の後期の小説に出てくるような、近代的自我が極度に肥大した、自らが傷つくことを過度に恐れる高慢で脆い青年。
みりおは(僕の感覚では)神経質な芝居が得意なので、たとえばロミオのような屈託のない青年よりは、こういう屈託で出来ているような役柄の方が向いていると思います。
実際、清顕を見ているとだんだん嫌な気分になっていきました。
(いや、学習院の制服姿のみりおには、全力全壊で萌えていたのですが)
聡子への手紙での復讐のくだりや、聡子の洞院宮との縁談を素知らぬ顔でやり過ごすくだりなどは、暗い葛藤が手に取るように分かり、見応えがありました。

ラブシーンも背徳の罪を孕んだもので、華やかさやときめきのようなものはまるでないのですが、得も言われぬ湿度のようなものを見事に表現していました。
清顕が己の闇から破滅へと向かっていく様に、否応なしに引き込まれました。

聡子役の咲妃みゆは、まだ野暮ったいところがあるものの、清顕の闇も罪もすべて引き受ける強さと、その裏にある諦念を見事に演じきっていました。
老練な女中蓼科を演じた専科の美穂圭子さんは言うまでもなく、その他の脇を固める若手たちも、非常に素晴らしい演技でした。
殊に、清顕の父松枝侯爵を演じた輝月ゆうまは、まだ研4だというのに非常にスケールの大きな演技で、将来性を大いに感じさせました。
(177cmということで、本当に大きくもあったわけですが)

脚本・演出の生田先生は30代前半の新進の演出家ですが、独特の世界を巧みに視覚化していました。
清顕が見る幻想的な悪夢などは、かなり実験的なテイストが盛り込まれていながらも変に奇を衒ったような厭味はなく、鳥肌が立ちました。

徹夜明けだったので、起きていられるか心配だったのですが、それどころか瞬きももどかしいくらいに見入ってしまいました。
あんなに集中して宝塚の舞台を見たのは久しぶりです。
長年宝塚を見続けてきましたが、指折りの出色の舞台だったと思います。

宝塚というと派手な衣装と照明のきらびやかな世界というイメージだと思いますが、決してそれだけではないということを改めて示した舞台でした。

コメント

_ manicure ― 2017年05月04日 16時49分

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