【坂本真綾】朗読活劇レチタ・カルダ「ジャンヌ・ダルク」@上野水上野外音楽堂2011年10月16日 00時47分

実はこの公演が一体どういうものが全く理解していなかったのですが、バイオリン・ギター・パーカッションの3人組「スパニッシュコネクション」が奏でる音楽をバックに、真綾が一人で朗読劇を演じるというもの。
本を手に、いわゆる読み上げる場面もあるのですが、2時間弱の半分以上は本を持たず、一人芝居の体裁でした。
(おそらく脚本は全て頭の中に入っていたのだと思います)

真綾の舞台人としての、表現者としてのオーラは別格だな、と改めて実感しました。
熱、と言い換えてもいいかもしれない。
真綾の体内で燃えさかる表現することへのエネルギーが熱とともに発光している感じ、とでも言うのでしょうか。
心して見ないとこちらがやられてしまう、そんな感じでした。

内容としては、ジャンヌの内面描写がメイン。
個人的には語りの部分がちょっと多いような気もしましたが、脚本はかなり良くできていたと思います。
科白と表情と最低限の身振りで、フランスを救った聖少女の物語を雄弁に紡ぎます。
言葉での演技が達者なのは当たり前として、身体表現が巧みなのも素晴らしいところ。
ジャンヌが矢で射抜かれるシーンなど、真に迫るものがありました。

オルレアン解放に奮闘するジャンヌと、異端審問で気丈に振る舞うジャンヌとで、「強さ」の質の違いがきちんと描出されており、このあたりからずっと息の詰め通しでした。
そして、白眉は、火刑台のジャンヌが、一瞬だけ19歳の哀れな少女に戻り、「水を」とか細くつぶやくシーン。
つま先から頭のてっぺんまで、一気に総毛立ちました。
この一言に、ジャンヌその人の全てが表されていたと言っても過言ではないと思います。

ジャンヌの最期も幕切れも割とあっさりしていたのですが、この上何か仕掛けられてもこちらが参ってしまうので、ちょうど良かったのかもしれません。

4列目と言うことで、真綾の表情の細部までじっくりと見ることができました。
眼差しの力がハンパ無かったです。
何度かがっちり視線が合いましたが、強いなあと思いました。
力強いのではなくて、しなやかという感じでした。

真綾の底なしの表現への意欲と実力に打ちのめされたひとときでした。
どこまで行ってくれるのか、これからの真綾が楽しみでなりません。