【坂本真綾】LIVE TOUR 2011“You can't catch me”@東京国際フォーラム2011年06月04日 10時34分

金曜19時ということで、仕事帰りのサラリーマンばかり。
(もちろん僕もそう)
ファンの年齢層が高めであることを、眼で見て実感することが出来ました。
個人的にはもっと若い人にも真綾の世界にふれてもらいたいと思います。
(あまりのクオリティーの高さに、他の人のライブが霞むおそれはありますが)

終了直後にも呟きましたが、びっくりしたのが音の良さ。
直近のリスアニライブの音のひどさで物理的に気持ちが悪くなったトラウマがあるので、真綾の歌が台無しになるのではないかという危惧を抱いていたのですが、真綾チームを見くびっていました。
あのバカでかい箱が真綾の声で包まれ、かつステージ上の音が全て聞こえるという、理想的な状態。
感覚としてはNHK大阪ホールで聴いているような感じでした。
ひたすら口を開けてうっとり。

これはひたすら音圧を上げて客を煽る必要がない、というのが最大の理由だと思います。
スピーカーの数もかなり少なめでした。
配置も工夫されていて、ミッドレンジ以上は宙吊り、ウーファーは舞台袖に直置きという状態。
強いて言えば低音が重量不足でしたが、あそこは低音の音圧を上げると派手に床が鳴るので致し方ないところでしょう。

いずれにしても、悪いのは箱ではない、ということを痛感させられました。

真綾自身も語っていましたが、震災前2公演を第1期、震災直後4公演を第2期とすると、この日からの4公演が第3期となり、セットリストも1期と2期のハイブリッドに。
福岡・名古屋・大阪・中野初日と参加して、幸運(?)にもどちらのセットリストも体験してきた身としては、3期のセトリは両方のいいとこ取りで、美味しすぎる組み合わせ。
楽しくて楽しくて仕方がありませんでした。

38列目でしたが、要所要所では双眼鏡(オペラグラスではない)使用で問題なし。
宝塚ファンはコンパクトで高倍率の双眼鏡が必携なので、こういうとき役に立ちます。
すっかり大人の女ですねえ。

こんな素敵なライブに2日続けて参加できるなんて、本当に幸せ。
最初は「音の悪い国際フォーラムに2日続けていくこともないかな」と思っていたのですが、とんでもないことでした。
今日もまたあの歌に浸ることが出来る。
アルバム「everywhere」を聴きながら、ニヤニヤが止まらないのでした。

【坂本真綾】LIVE TOUR 2011“You can't catch me”@東京国際フォーラム2日目2011年06月05日 11時13分

まず驚いたのが、前日と比較して音が改善されていたこと。
やや物足りないボリュームだった低音が厚くなり、ベースのラインやバスドラがはっきり聞こえるようになっていました。
その他の楽器も分離が良くなり、また少しピーキーだったエレキギターは角が取れて丸くなっていました。
座席の位置は前日とほぼ一緒だったので、気のせいではないはず。
いやはや、大したものです。

中島美嘉のツアーにも帯同しているコーラスのハルナさんのみこの日は欠席。
前日も富山から(石川だったかな?)駆けつけたそうです。
そしてバンマスの北川さんは娘さんの運動会に参加できなかったとか。
延期の影響がちらほら出ていました。

前日はゆったりとした雰囲気で濃密な歌の世界を堪能するといった感じでしたが、この日は白熱したパフォーマンスの渦に否応なしに巻き込まれました。
F1でいえばモナコとモンツァほどの違い。
客席も熱かったです。

セットリストで前日と異なるのは1曲だけ。
真綾は毎回同じことをして、毎回が特別なライブになることを目標にすると語っていますが、この2日間はそれが達成されたと言っていいと思います。

後半のノリ曲での、真綾の気合いの入りっぷりがすごかったです。
真綾のライブで飛ぶことはないと思っていたのですが、飛ばざるを得ませんでした。
ただ勢いに釣られるのではなくて、歌のパワーに突き上げられる感覚がとても気持ちよかったです。

この2日間の本来の公演日である4/23と24は、それぞれアルバム「グレープフルーツ」とシングル「約束はいらない」の発売日。
アンコール1曲目はそれにちなんでの選曲でした。
前日は「グレープフルーツ」から「I And I」というレアな選曲でしたが、この日はもちろん「約束はいらない」。
僕がこの曲を聴くのは「タナボタ3」以来、2度目。
そのときは号泣したのですが、今回はそれどころでは済みませんでした。

この曲を歌う真綾の迫力は尋常ではありませんでした。
真綾の背後に明らかに何か大きなものが見えました。
喩えは悪いのですが、ドズル・ザビの最期みたいな感じです。
打ちのめされて震えが止まらず、正直立っているのもやっとでした。

良し悪しや高い低いはそれぞれの価値観ですが、真綾は他の人とは明らかに違うステージに立っていることを改めて実感しました。
大げさかもしれませんが、こんなライブを知ってしまうことはむしろ不幸なことなのではないか、と思いました。

ツアーファイナルの仙台がどうなってしまうのか、期待は高まるばかりです。

【坂本真綾】LIVE TOUR 2011“You can't catch me”@Zepp Sendai2011年06月18日 12時20分

まだ今年も半分以上残っていますが、おそらく今年最高のライブとなるでしょう。

席は2階5列目の下手寄り。
Zeppで初めての2階席でしたが、絶好のポジションです。
舞台全体がよく見えるし、大ホールに比べたら全然近いし、音も良いし。
音に関しては、真綾だからかもしれませんが。

この日の音は僕が参加した全7回のうち文句なくベストで、いわゆる「スピーカーの存在を忘れる」音でした。
箱が箱なので幾分デッドでしたが、舞台上で演奏されている音全てがはっきりと聞こえ、真綾の歌声がこちらに襲いかかってくるような押し出しの良さで、ひたすら真綾の歌に酔うことが出来ました。

真綾の声も絶好調。
国際フォーラムもすごかったですが、箱が小さい分この日の方が迫力を感じました。
テンションも最高で、MCでは言いたい放題w。
「MCが嫌いなので、MCのないライブがしたいけど、話し始めると止まらない」だの、「写真が嫌いなので写真集なんて考えたこともなかったけど、今回は記録として残したいから最初で最後の写真集を作る」だとか。
真綾らしくて僕は好きですが。

真綾らしいといえば、最後まで泣きませんでした。
ステージで泣くのは30でやめた、とか言ってましたが、ちょっとMCで潤むシーンもありましたが、歌は最後まで揺るがずに歌いきりました。
そういうかわいげのないところがまた可愛いです。

舞台経験が豊富なおかげで、歌う姿が良い意味で演技になっているのは、他の声優にはない特長だと思います。
ただかっこをつけているのではなくて、仕種でも歌の世界を表現していて、時にすごくチャーミングで、時にすごくハンサムで、眼が離せません。

ピアノ独奏で歌われる「ユニバース」。
ただ歌が上手いだけでなく、一つの世界を歌声一つで作り上げてしまう。
このあたりもミュージカルで培ったものが大きいのかもしれません。

Private Sky→Get No Satisfaction!→マジックナンバーと続くラストに向けてのラッシュは、ハンパないエネルギー。
真綾もバンドメンバーも本当に楽しそうで(はしゃぐ真綾がすごく可愛かった)、こちらもはしゃがざるを得ませんでした。
北川さんもこれまで以上に足を開いてアコギを弾いていました。
(あんなに足を開いて力を込めてアコギを弾く人は他にいないでしょう)

そして「光あれ」。
歌詞一つ一つを胸に刻みながら聴きました。
この状況で、そして仙台の地で歌われる「光あれ」。
安っぽい感傷と思われるかもしれませんが、大サビでは慟哭を止めることが出来ませんでした。
唇を痛いほど噛みしめていないと、本当に声を上げて泣き出してしまうところでした。

真綾の歌唱もまさに絶唱と言うに相応しい壮絶なものでした。
こんなに丸裸な、感情を剥き出しにした歌を僕は聴いたことがありません。
聴きながら、フルトヴェングラーの1947年5月27日の「運命」を連想しました。
シチュエーションも似ていますし。

それにしても、ノリノリの3曲をぶっ飛ばして歌った直後に「光あれ」を完璧に歌い上げる真綾の歌唱力は、つくづく群を抜いていると思います。

アンコール1曲目は「約束はいらない」。
真綾の歌も素晴らしかったのですが、クライマックスでの佐野さんの魂のドラムが凄まじく、全身が粟だって震えました。
ドラムが咆吼する姿を初めて見ました。

震災前(正確には当日ですが)・震災直後・とりあえず平静を取り戻した後と3期に分けて、計7回のライブに参加して、歌に対する感じ方が大きく変わったような気がします。
真綾の歌が持つ力、そして世界の変化に対応して真綾自身も変わっていく姿に触れて、非常にたくさんのことを感じました。
今後はライブへの接し方も少し変化するかもしれません。

このツアー、当初から映像化する予定はなかったとのこと。
商売っ気がないというか、このチームは真綾を中心に良い作品を作って、それでそこそこ飯が食えればいいというスタンスなのでしょう。
素晴らしい姿勢だとは思いますが、ファンとしては、もったいないなあというのが偽らざる本音です。

【クラシック】日フィル:第631回定期演奏会@サントリーホール2011年06月18日 12時24分

ストラヴィンスキー:交響的幻想曲「花火」
チャイコフスキー:ピアノと管弦楽のための幻想曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

指揮・沼尻竜典 ピアノ:小川典子

本来なら首席指揮者のラザレフが振る予定だったが、体調不良により急遽演目を変えて沼尻が登板。
沼尻は以前同じ日フィルを振ったブラームスの2番がメインプロの演奏会を聴いており、なかなか良い印象を持っている指揮者。
コクよりはキレで聴かせるタイプだが程良くテンションが高いというのがそのときの記憶だが、それは間違っていなかった。

プログラムはラザレフの指示がということだが、いずれも初めて聴く演目。
しかし、いずれも素晴らしい曲だった。

ストラヴィンスキーは、光彩陸離としたオケの音色が楽しい佳品。
「春の祭典」などはどこが良いのかさっぱり分からないが、この曲はごく短い作品であるせいか、実におしゃれで気が利いている。
ハルサイもこの延長線上だったら素晴らしい曲になったのではないか。

演奏会を通して改めて思ったが、日フィルは上手くなった気がする。
ラザレフが首席になり、オケが上手くないと話にならないプロコフィエフとかを良くやるようになったからだろうか。

チャイコフスキーは聞いたこともない作品だが、何だかよく分からない曲だった。
何というか、歌心にあふれたショスタコ、という感じ。
何だか妙にリズムが強調されるし、同じ旋律が執拗に反復するし、何を言いたいのかさっぱり分からない。
ただオケもピアノもボリュームたっぷりに鳴るので、退屈はしなかった。
退屈ではなかったが、「だから何?」という感じ。
タンブリンが大活躍で、演奏が終わった後指揮者に促されて打楽器奏者が単独で挨拶するという面白い光景が見られた。

ショスタコはもうショスタコ節全開の、ぶち切れた名作。
とにかくオケはハチャメチャなリズムで大音量で鳴るか、地獄の音楽みたいにひたすら暗い音を囁くかのどちらか。
何が何だかよく分からないが、とにかくソ連で生きていくのが辛いことだけは伝わって来るという感じ。
スケルツォと終結部の爆音が凄まじかった。

2階から見ていて、とにかく木管奏者の負担がハンパではなく、あれは楽器演奏経験のある人にどうなのか聴いてみたいところ。
ホルンはしょっちゅう裏声みたいな高音を出すし、ファゴットの首席が窒息して死ぬんじゃないかという長いパッセージがあったり、かなり消耗しそうな曲だった。
ともあれ、これはCDでも聞き込むべき曲だと思った。

全曲大編成かつ大音量だったが、沼尻はオケをキリッとまとめて良く鳴らしていた。
派手ではないが変に職人肌というわけでもなく、バランスの取れた良い指揮者だと思う。