【雑記】宝塚のシステム ― 2013年07月15日 00時56分
誰も興味はないと思うんですが、日がな一日ずっと宝塚の映像を見ていたので、思いつくままにつれづれに。
宝塚歌劇団に入団するためには、宝塚音楽学校に入らなければなりません。
受験資格は中卒以上の満18歳までの女子、となっていますので、同期でも最大で3歳の年の差があるわけです。
音楽学校は2年制で、1年目が予科、2年目が本科と呼ばれます。
この2年間でダンス・歌・芝居の基本をみっちり仕込まれ、卒業する際には一般公開される卒業公演を行います。
卒業時には成績が公開され、成績優秀者がその後花開いていく可能性が高いです。
本科を卒業するといよいよ入団になるわけですが、入団しても彼女たちが宝塚音楽学校の生徒であることに変わりはなく、「研究科」の生徒という扱いになります。
これはトップスターでも一緒です。
なのでファンはタカラジェンヌのことを「生徒」と呼ぶのです。
基本的には年功序列の世界なので、入団してからの年次が大切な要素になります。
その呼び方も独特で、入団1年目を研1(研究科1年の略)、5年目なら研5となります。
研13ぐらいでトップになって、2~3年で退団するのが通常の流れでしょうか。
ある程度の貫禄が求められる男役と違って、初々しさが必須の娘役は、大体研5か6ぐらいまでにトップになることが多いです(早いと研2でトップ就任ということもあります)。
トップ・2番手・3番手といった各組(花・月・雪・星・宙)の中での格の違いも、相撲の世界のように厳格です。
公演パンフレットの写真の掲載順で、いわば番付が分かる仕組みです。
3番手くらいまでになると序列は必ずしも学年順ではなく、人気と実力順になります。
当然舞台での役柄や出番の多さも変わってきます。
この他、各組にはトップよりもずっと学年が上の組長・副組長がいて、いわば管理職のように組全体を取りまとめます。
ほとんどの生徒は上に上がることが望めなくなった時点で退団しますが、トップにはなれないけれども芸達者で、歌劇団に残りたいという人にはこうした道が残されています。
脇役も重要ですし老け役も当然必要なので、こうした人材もなくてはならないのです。
脇を固める人材の豊富さも宝塚の舞台の質の高さを支えています。
演目の構成は、1時間35分のミュージカルと55分のショーの2本立てで、作品はオリジナルというのが基本です。
最近は海外のミュージカル作品や原作もので、ミュージカル1本(いわゆる2幕物)の割合も増えてきました。
2幕物の場合は、最後15分くらいが短めのショー仕立てになっていて、大階段を降りるフィナーレで終わります。
ショーのフィナーレでは宝塚の代名詞となっている大きな羽根を背負って降りてくるわけですが(羽根のないときもあり)、この羽根の大きさも格が上がるほど大きくなり、トップスターは身体よりもずっと大きな羽根を背負うことになります。
生徒一人ひとりに「公式の愛称」があるというのも他にはない特徴の一つでしょうか。
僕が大好きな明日海りおであれば「みりお」ですが、これはファンが勝手に呼ぶのではなく、「宝塚おとめ」という公式の生徒の名鑑に記載されているのです。
ファンは基本的に生徒のことは愛称で呼ぶのが慣習なので、芸名と両方憶えねばならず、記憶力が落ちてきた身にはちょっと大変だったりします。
他にもいろいろ決まり事があるんですが、キリがないのでこの辺で。
宝塚を楽しめるかどうかは、いろいろなお約束に没頭できるか否かで決まると思っています。
宝塚歌劇団に入団するためには、宝塚音楽学校に入らなければなりません。
受験資格は中卒以上の満18歳までの女子、となっていますので、同期でも最大で3歳の年の差があるわけです。
音楽学校は2年制で、1年目が予科、2年目が本科と呼ばれます。
この2年間でダンス・歌・芝居の基本をみっちり仕込まれ、卒業する際には一般公開される卒業公演を行います。
卒業時には成績が公開され、成績優秀者がその後花開いていく可能性が高いです。
本科を卒業するといよいよ入団になるわけですが、入団しても彼女たちが宝塚音楽学校の生徒であることに変わりはなく、「研究科」の生徒という扱いになります。
これはトップスターでも一緒です。
なのでファンはタカラジェンヌのことを「生徒」と呼ぶのです。
基本的には年功序列の世界なので、入団してからの年次が大切な要素になります。
その呼び方も独特で、入団1年目を研1(研究科1年の略)、5年目なら研5となります。
研13ぐらいでトップになって、2~3年で退団するのが通常の流れでしょうか。
ある程度の貫禄が求められる男役と違って、初々しさが必須の娘役は、大体研5か6ぐらいまでにトップになることが多いです(早いと研2でトップ就任ということもあります)。
トップ・2番手・3番手といった各組(花・月・雪・星・宙)の中での格の違いも、相撲の世界のように厳格です。
公演パンフレットの写真の掲載順で、いわば番付が分かる仕組みです。
3番手くらいまでになると序列は必ずしも学年順ではなく、人気と実力順になります。
当然舞台での役柄や出番の多さも変わってきます。
この他、各組にはトップよりもずっと学年が上の組長・副組長がいて、いわば管理職のように組全体を取りまとめます。
ほとんどの生徒は上に上がることが望めなくなった時点で退団しますが、トップにはなれないけれども芸達者で、歌劇団に残りたいという人にはこうした道が残されています。
脇役も重要ですし老け役も当然必要なので、こうした人材もなくてはならないのです。
脇を固める人材の豊富さも宝塚の舞台の質の高さを支えています。
演目の構成は、1時間35分のミュージカルと55分のショーの2本立てで、作品はオリジナルというのが基本です。
最近は海外のミュージカル作品や原作もので、ミュージカル1本(いわゆる2幕物)の割合も増えてきました。
2幕物の場合は、最後15分くらいが短めのショー仕立てになっていて、大階段を降りるフィナーレで終わります。
ショーのフィナーレでは宝塚の代名詞となっている大きな羽根を背負って降りてくるわけですが(羽根のないときもあり)、この羽根の大きさも格が上がるほど大きくなり、トップスターは身体よりもずっと大きな羽根を背負うことになります。
生徒一人ひとりに「公式の愛称」があるというのも他にはない特徴の一つでしょうか。
僕が大好きな明日海りおであれば「みりお」ですが、これはファンが勝手に呼ぶのではなく、「宝塚おとめ」という公式の生徒の名鑑に記載されているのです。
ファンは基本的に生徒のことは愛称で呼ぶのが慣習なので、芸名と両方憶えねばならず、記憶力が落ちてきた身にはちょっと大変だったりします。
他にもいろいろ決まり事があるんですが、キリがないのでこの辺で。
宝塚を楽しめるかどうかは、いろいろなお約束に没頭できるか否かで決まると思っています。
【宝塚】月組大劇場公演『ベルサイユのばら』(盛大にネタバレ) ― 2013年01月29日 23時51分
※ストーリーを含むネタバレ多数なので、閲覧にはご注意ください。
本役と、まさおとみりおが入れ替わる役代わり公演を2回ずつ観ました。
土曜日が本役→役代わり、日曜日が役代わり→本役です。
以上を踏まえての、公演レポです。
物語の組み立てについて、首を傾げるところ無しとはしません。
最初からアンドレの眼は悪いし、オスカルは自由主義に目覚めて衛兵隊に転属してしまっているし、フェルゼンのことは諦めたことになっているし、というのは素っ飛ばしすぎでないか、と。
一応説明的な科白が一言あるものの、一体どうしてアンドレの眼が悪いのか、ということになるでしょうし、フェルゼンがオスカルに別れを告げに来るシーンも、「こいつ何言ってんだ?」ということになるでしょう。
のっけからオスカルが自由主義に燃えているところも、ピンときません。
マラソンで言えば、ペースメーカーが外れた30km地点から始まるようなものです。
僕は原作を読み込んでいましたから、どういう時点から始まったのかすぐ分かっていましたので特に問題はありませんでしたが、原作をよく知らない状態で観たら、よく分からなかったんじゃないかと思います。
舞台の造り自体も古めかしいものがあります。
もちろん初演当時から受け継がれてきた伝統というものなんでしょうが、少なからず違和感を覚えました。
今時滅多にしないべったりしたブルーのアイラインにはびっくりしましたし、「オスカーーール!」のようにやたらと長く伸ばす呼びかけの科白にも面食らいました。
バスチーユ戦の群舞の振り付けも時代を感じさせるもので、とにかくえらく時代がかった舞台だなあ、と思ったものです。
土曜日の午後の公演では、役代わりの難しさもひしひしと感じました。
たった1時間のインターバルで、まさおがオスカル→アンドレ、みりおがアンドレ→オスカルと入れ替わって演じるわけですが、今イチ切り替わっていない感があるのです。
アンドレはあまり男っぽくないし、逆にオスカルは女っぽくない。
衣装と化粧と科白が入れ替わっただけで、あまり役そのものが替わった感じがせず、観ていてものめり込むことが出来ず、首を傾げているうちに終わってしまいました。
それでも、最後のあたりではだいぶ練れてきた感があったので、役代わりから始まる翌日には期待が持てました。
とまあ、いろいろケチをつけようと思えばつけられるのですが、それを差し引いても素晴らしかったです。
まずまさおのオスカルとみりおのアンドレが素晴らしい!
まさおは典型的な白馬の王子様タイプの男役なので、男装の麗人を演じさせてはまらないわけがありません。
基本的には毅然としているのだけど、ちょっとした仕草の端々が実に女性的で(父親のジャルジェ将軍に殴られて倒れ込むところとか)、また科白回しも女性が男言葉を使っている感じがよく出ていて、非常に上手かったです。
アンドレもどちらかといえば湿度の高い男ですが、みりおは可愛い顔に似合わずこの手の男がぴったり合うので、感情移入して観ることが出来ます。
話の辻褄がどうのとかそういうことは完全に抜きにして、二人がついに結ばれるシーンや、倒れるシーンは涙なくしてみることは出来ません。
びっくりしたのは、ラストの有名な馬車のシーン。
銃に倒れたオスカルを、ペガサスの牽く馬車に乗ったアンドレが迎えに来る感動的なシーンな訳ですが、この馬車がすごい。
ここまでやるか、とさすがの僕も度肝を抜かれました。
お芝居が終わった後には15分ほどの短いショーがついています。
(2幕物の長いお芝居をやるときの慣例)
ここでの、故喜多弘先生振付のボレロがもう、素敵すぎて鼻血物。
みりおが女役で、身体のラインがはっきり分かるぴったりしたドレスで出てくるんですが、これがもう色っぽくて。
しかも、お芝居でアンドレをやったときは、化粧が男役なので、彫りが深くなる分ものすごく妖艶。
それだけでも素敵なのに、まさおがみりおの肩から胸、腰までを愛撫する振りでは、もうマンガやアニメなら鼻血を通り過ぎて喀血するところです。
瞬きするのも惜しいデュエットダンスです。
娘役トップのちゃぴの出番があまりないのがちょっと可哀想な気もしますが、「ロミジュリ」ではまだ一杯いっぱいなところがあった彼女が、すっかり立派なトップスターになっていて、感心しました。
脇役では、マギー演じるアランが儲け役でした。
さすがの演技力で、舞台全体をキリッと引き締めていました。
役代わりも、きちんと切り替えが出来ている場合は、本役と同様に面白く観ることが出来ます。
特に、アンドレが死ぬシーンで、みりおが女の声で「アンドレー!」と叫ぶシーンは、哀しいシーンではあるのですが、きゅんときてしまいました。
何だかんだで作品自体にやはり力があるし、演じるスターが魅力的なので、立派に宝塚の歴史に残る名舞台になっていると思います。
特にまさおファン、みりおファンなら何度観ても飽きることはない作品です。
(実際、日曜日は午前・午後ともものすごい立ち見の数でした)
僕が観られるのはあと東京での2公演のみですが、悔いの残らないよう両の眼を見開いてのぞみたいと思います。
本役と、まさおとみりおが入れ替わる役代わり公演を2回ずつ観ました。
土曜日が本役→役代わり、日曜日が役代わり→本役です。
以上を踏まえての、公演レポです。
物語の組み立てについて、首を傾げるところ無しとはしません。
最初からアンドレの眼は悪いし、オスカルは自由主義に目覚めて衛兵隊に転属してしまっているし、フェルゼンのことは諦めたことになっているし、というのは素っ飛ばしすぎでないか、と。
一応説明的な科白が一言あるものの、一体どうしてアンドレの眼が悪いのか、ということになるでしょうし、フェルゼンがオスカルに別れを告げに来るシーンも、「こいつ何言ってんだ?」ということになるでしょう。
のっけからオスカルが自由主義に燃えているところも、ピンときません。
マラソンで言えば、ペースメーカーが外れた30km地点から始まるようなものです。
僕は原作を読み込んでいましたから、どういう時点から始まったのかすぐ分かっていましたので特に問題はありませんでしたが、原作をよく知らない状態で観たら、よく分からなかったんじゃないかと思います。
舞台の造り自体も古めかしいものがあります。
もちろん初演当時から受け継がれてきた伝統というものなんでしょうが、少なからず違和感を覚えました。
今時滅多にしないべったりしたブルーのアイラインにはびっくりしましたし、「オスカーーール!」のようにやたらと長く伸ばす呼びかけの科白にも面食らいました。
バスチーユ戦の群舞の振り付けも時代を感じさせるもので、とにかくえらく時代がかった舞台だなあ、と思ったものです。
土曜日の午後の公演では、役代わりの難しさもひしひしと感じました。
たった1時間のインターバルで、まさおがオスカル→アンドレ、みりおがアンドレ→オスカルと入れ替わって演じるわけですが、今イチ切り替わっていない感があるのです。
アンドレはあまり男っぽくないし、逆にオスカルは女っぽくない。
衣装と化粧と科白が入れ替わっただけで、あまり役そのものが替わった感じがせず、観ていてものめり込むことが出来ず、首を傾げているうちに終わってしまいました。
それでも、最後のあたりではだいぶ練れてきた感があったので、役代わりから始まる翌日には期待が持てました。
とまあ、いろいろケチをつけようと思えばつけられるのですが、それを差し引いても素晴らしかったです。
まずまさおのオスカルとみりおのアンドレが素晴らしい!
まさおは典型的な白馬の王子様タイプの男役なので、男装の麗人を演じさせてはまらないわけがありません。
基本的には毅然としているのだけど、ちょっとした仕草の端々が実に女性的で(父親のジャルジェ将軍に殴られて倒れ込むところとか)、また科白回しも女性が男言葉を使っている感じがよく出ていて、非常に上手かったです。
アンドレもどちらかといえば湿度の高い男ですが、みりおは可愛い顔に似合わずこの手の男がぴったり合うので、感情移入して観ることが出来ます。
話の辻褄がどうのとかそういうことは完全に抜きにして、二人がついに結ばれるシーンや、倒れるシーンは涙なくしてみることは出来ません。
びっくりしたのは、ラストの有名な馬車のシーン。
銃に倒れたオスカルを、ペガサスの牽く馬車に乗ったアンドレが迎えに来る感動的なシーンな訳ですが、この馬車がすごい。
ここまでやるか、とさすがの僕も度肝を抜かれました。
お芝居が終わった後には15分ほどの短いショーがついています。
(2幕物の長いお芝居をやるときの慣例)
ここでの、故喜多弘先生振付のボレロがもう、素敵すぎて鼻血物。
みりおが女役で、身体のラインがはっきり分かるぴったりしたドレスで出てくるんですが、これがもう色っぽくて。
しかも、お芝居でアンドレをやったときは、化粧が男役なので、彫りが深くなる分ものすごく妖艶。
それだけでも素敵なのに、まさおがみりおの肩から胸、腰までを愛撫する振りでは、もうマンガやアニメなら鼻血を通り過ぎて喀血するところです。
瞬きするのも惜しいデュエットダンスです。
娘役トップのちゃぴの出番があまりないのがちょっと可哀想な気もしますが、「ロミジュリ」ではまだ一杯いっぱいなところがあった彼女が、すっかり立派なトップスターになっていて、感心しました。
脇役では、マギー演じるアランが儲け役でした。
さすがの演技力で、舞台全体をキリッと引き締めていました。
役代わりも、きちんと切り替えが出来ている場合は、本役と同様に面白く観ることが出来ます。
特に、アンドレが死ぬシーンで、みりおが女の声で「アンドレー!」と叫ぶシーンは、哀しいシーンではあるのですが、きゅんときてしまいました。
何だかんだで作品自体にやはり力があるし、演じるスターが魅力的なので、立派に宝塚の歴史に残る名舞台になっていると思います。
特にまさおファン、みりおファンなら何度観ても飽きることはない作品です。
(実際、日曜日は午前・午後ともものすごい立ち見の数でした)
僕が観られるのはあと東京での2公演のみですが、悔いの残らないよう両の眼を見開いてのぞみたいと思います。
【宝塚】月組東京特別公演「春の雪 ― 2012年11月03日 11時32分
原作は三島由紀夫の同名作品。
僕は三島は読まず嫌いをしているので、もちろんこの作品も読んだことはないのですが、作品自体も良くできていましたし、出演者たちの人物造形も大変素晴らしかったです。
明日海りお(みりお)が演じる松枝清顕は、漱石の後期の小説に出てくるような、近代的自我が極度に肥大した、自らが傷つくことを過度に恐れる高慢で脆い青年。
みりおは(僕の感覚では)神経質な芝居が得意なので、たとえばロミオのような屈託のない青年よりは、こういう屈託で出来ているような役柄の方が向いていると思います。
実際、清顕を見ているとだんだん嫌な気分になっていきました。
(いや、学習院の制服姿のみりおには、全力全壊で萌えていたのですが)
聡子への手紙での復讐のくだりや、聡子の洞院宮との縁談を素知らぬ顔でやり過ごすくだりなどは、暗い葛藤が手に取るように分かり、見応えがありました。
ラブシーンも背徳の罪を孕んだもので、華やかさやときめきのようなものはまるでないのですが、得も言われぬ湿度のようなものを見事に表現していました。
清顕が己の闇から破滅へと向かっていく様に、否応なしに引き込まれました。
聡子役の咲妃みゆは、まだ野暮ったいところがあるものの、清顕の闇も罪もすべて引き受ける強さと、その裏にある諦念を見事に演じきっていました。
老練な女中蓼科を演じた専科の美穂圭子さんは言うまでもなく、その他の脇を固める若手たちも、非常に素晴らしい演技でした。
殊に、清顕の父松枝侯爵を演じた輝月ゆうまは、まだ研4だというのに非常にスケールの大きな演技で、将来性を大いに感じさせました。
(177cmということで、本当に大きくもあったわけですが)
脚本・演出の生田先生は30代前半の新進の演出家ですが、独特の世界を巧みに視覚化していました。
清顕が見る幻想的な悪夢などは、かなり実験的なテイストが盛り込まれていながらも変に奇を衒ったような厭味はなく、鳥肌が立ちました。
徹夜明けだったので、起きていられるか心配だったのですが、それどころか瞬きももどかしいくらいに見入ってしまいました。
あんなに集中して宝塚の舞台を見たのは久しぶりです。
長年宝塚を見続けてきましたが、指折りの出色の舞台だったと思います。
宝塚というと派手な衣装と照明のきらびやかな世界というイメージだと思いますが、決してそれだけではないということを改めて示した舞台でした。
僕は三島は読まず嫌いをしているので、もちろんこの作品も読んだことはないのですが、作品自体も良くできていましたし、出演者たちの人物造形も大変素晴らしかったです。
明日海りお(みりお)が演じる松枝清顕は、漱石の後期の小説に出てくるような、近代的自我が極度に肥大した、自らが傷つくことを過度に恐れる高慢で脆い青年。
みりおは(僕の感覚では)神経質な芝居が得意なので、たとえばロミオのような屈託のない青年よりは、こういう屈託で出来ているような役柄の方が向いていると思います。
実際、清顕を見ているとだんだん嫌な気分になっていきました。
(いや、学習院の制服姿のみりおには、全力全壊で萌えていたのですが)
聡子への手紙での復讐のくだりや、聡子の洞院宮との縁談を素知らぬ顔でやり過ごすくだりなどは、暗い葛藤が手に取るように分かり、見応えがありました。
ラブシーンも背徳の罪を孕んだもので、華やかさやときめきのようなものはまるでないのですが、得も言われぬ湿度のようなものを見事に表現していました。
清顕が己の闇から破滅へと向かっていく様に、否応なしに引き込まれました。
聡子役の咲妃みゆは、まだ野暮ったいところがあるものの、清顕の闇も罪もすべて引き受ける強さと、その裏にある諦念を見事に演じきっていました。
老練な女中蓼科を演じた専科の美穂圭子さんは言うまでもなく、その他の脇を固める若手たちも、非常に素晴らしい演技でした。
殊に、清顕の父松枝侯爵を演じた輝月ゆうまは、まだ研4だというのに非常にスケールの大きな演技で、将来性を大いに感じさせました。
(177cmということで、本当に大きくもあったわけですが)
脚本・演出の生田先生は30代前半の新進の演出家ですが、独特の世界を巧みに視覚化していました。
清顕が見る幻想的な悪夢などは、かなり実験的なテイストが盛り込まれていながらも変に奇を衒ったような厭味はなく、鳥肌が立ちました。
徹夜明けだったので、起きていられるか心配だったのですが、それどころか瞬きももどかしいくらいに見入ってしまいました。
あんなに集中して宝塚の舞台を見たのは久しぶりです。
長年宝塚を見続けてきましたが、指折りの出色の舞台だったと思います。
宝塚というと派手な衣装と照明のきらびやかな世界というイメージだと思いますが、決してそれだけではないということを改めて示した舞台でした。
【宝塚】宙組東京公演「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」 ― 2012年10月27日 18時53分
原作を知らないので元々どういう筋立てなのか詳細が分からないのですが、脚本・演出の小池先生の言うとおりかなり宝塚向けに脚色されている印象。
宇宙でのドンパチなど表現しようがないわけで、基本的には銀河帝国内部の人間ドラマが中心に語られていました。
ラインハルトを演ずる新トップスター鳳稀かなめはノーブルな雰囲気漂う、正統派の二枚目。
歌も踊りも芝居もそつなくこなす優等生タイプではあるものの、そうであるが故に、ここがすごい、という個性に欠ける憾みがあります。
役にもものすごくはまっており、とても素敵だったのは確かなんですが、思わず身を乗り出してしまうような場面はありませんでした。
ケチのつけようはないけれど、どこか印象に残ったところがあるかというと思いつかない、そんな感じでした。
ヒルダ役の実咲凛音もこれがお披露目。
ちょっと野暮ったい感じがするものの、美人だし、歌が上手いので好印象。
ただ、この公演にはラブロマンス要素が皆無で、娘役が仕事をする場面がないので、影が薄いのは否めませんでした。
オーベルシュタイン役の悠未ひろは、ベテランらしく実に巧みに演じていました。
スター性には欠けるけれども、コミカルな役もこなせるし、バイプレーヤーとして貴重な存在だと思います。
印象に残ったのが、緒月遠麻演じるヤン・ウェンリー。
主要登場人物の中で唯一の平民のかつ職業軍人として、銀河帝国のお歴々とは全く異なる雰囲気を醸し出していました。
一歩引いたようなクールさと斜に構えた皮肉っぽさが、王族やら貴族やら帝国軍人やらがひしめく舞台の中で、ちょうど良いアクセントになっていました。
雪組版の「ロミオとジュリエット」ではティボルトを好演していた彼女ですが、演技派の面目躍如と言ったところでしょう。
一方で、個人的にはキルヒアイスの朝夏まなとには物足りなさが残りました。
あの生来の善人っぽさというか、曇りのない白さがいいという向きも多いと思いますが、男役に不可欠な色気が感じられないのです。
顔がきれいな分、仏作って魂入れず、というように感じられて仕方がありません。
キルヒアイスにもう少し色気があれば、腐っている人間としてはいろいろと妄想を逞しくしてもっと盛り上がれたと思うのですが、つゆともそういう雰囲気にはならず、残念な限りです。
物語でいえば、尺の問題だと思いますが、フレデリカのエピソードがもうちょっと盛り込まれても良かったように思います。
また、その他の若手が演じていた帝国軍人たちも、今イチピンとこない感じでした。
そつはないのですが、これは、と思うことはなかったです。
衣装の作り込みは宝塚の本領発揮で、さすがの一言。
コスチュームプレイの醍醐味を満喫しました。
全体としては、必ずしも満腹になったとは言えないものの、概ね満足しました。
顔はきれいな子たちが多いので、後はもう少し色気が出てくると良い組になる気がします。
宇宙でのドンパチなど表現しようがないわけで、基本的には銀河帝国内部の人間ドラマが中心に語られていました。
ラインハルトを演ずる新トップスター鳳稀かなめはノーブルな雰囲気漂う、正統派の二枚目。
歌も踊りも芝居もそつなくこなす優等生タイプではあるものの、そうであるが故に、ここがすごい、という個性に欠ける憾みがあります。
役にもものすごくはまっており、とても素敵だったのは確かなんですが、思わず身を乗り出してしまうような場面はありませんでした。
ケチのつけようはないけれど、どこか印象に残ったところがあるかというと思いつかない、そんな感じでした。
ヒルダ役の実咲凛音もこれがお披露目。
ちょっと野暮ったい感じがするものの、美人だし、歌が上手いので好印象。
ただ、この公演にはラブロマンス要素が皆無で、娘役が仕事をする場面がないので、影が薄いのは否めませんでした。
オーベルシュタイン役の悠未ひろは、ベテランらしく実に巧みに演じていました。
スター性には欠けるけれども、コミカルな役もこなせるし、バイプレーヤーとして貴重な存在だと思います。
印象に残ったのが、緒月遠麻演じるヤン・ウェンリー。
主要登場人物の中で唯一の平民のかつ職業軍人として、銀河帝国のお歴々とは全く異なる雰囲気を醸し出していました。
一歩引いたようなクールさと斜に構えた皮肉っぽさが、王族やら貴族やら帝国軍人やらがひしめく舞台の中で、ちょうど良いアクセントになっていました。
雪組版の「ロミオとジュリエット」ではティボルトを好演していた彼女ですが、演技派の面目躍如と言ったところでしょう。
一方で、個人的にはキルヒアイスの朝夏まなとには物足りなさが残りました。
あの生来の善人っぽさというか、曇りのない白さがいいという向きも多いと思いますが、男役に不可欠な色気が感じられないのです。
顔がきれいな分、仏作って魂入れず、というように感じられて仕方がありません。
キルヒアイスにもう少し色気があれば、腐っている人間としてはいろいろと妄想を逞しくしてもっと盛り上がれたと思うのですが、つゆともそういう雰囲気にはならず、残念な限りです。
物語でいえば、尺の問題だと思いますが、フレデリカのエピソードがもうちょっと盛り込まれても良かったように思います。
また、その他の若手が演じていた帝国軍人たちも、今イチピンとこない感じでした。
そつはないのですが、これは、と思うことはなかったです。
衣装の作り込みは宝塚の本領発揮で、さすがの一言。
コスチュームプレイの醍醐味を満喫しました。
全体としては、必ずしも満腹になったとは言えないものの、概ね満足しました。
顔はきれいな子たちが多いので、後はもう少し色気が出てくると良い組になる気がします。
【宝塚】月組大劇場公演「ロミオとジュリエット」 ― 2012年07月09日 22時38分
フランスで大ヒットしたミュージカルの翻案で、宝塚では再々演になります。
僕は前回の雪組公演を見ており、大変面白かったのでそれだけでも期待大なのに、僕が大好きな明日海りおがダブルキャストでロミオとティボルトを演じるというので、いやが上にも期待は高まります。
ロミオ:龍真咲(まさお) ティボルト:明日海りお(みりお)
ロミオ:明日海りお ティボルト:龍真咲
の2通りのキャストを見てきました。
2日続けて両者を見たので、違いがはっきりと分かって面白かったです。
まさおは典型的な王子様キャラなので、ロミオははまり役。
純真無垢な心で一途にジュリエットを愛し抜く姿にひたすら心打たれました。
雪組公演時の音月桂と全く同じ系統だと言えると思います。
一方で、ティボルトは今イチ存在感が出ない感じ。
メイクも工夫してワルな感じを出そうとしているんだけど、いかんせん王子様が無理矢理ワルな振りをしている感が拭えません。
もちろん、それはそれで萌えるんですがw。
一方で、みりおのティボルトはかなりいい。
かなり迫力のあるワルっぷりでしたが、それだけでなく、本当は自分もロミオのように愛のために生きたいのに、キャピュレット家の跡継ぎとして許されない葛藤を表現していて、深みがありました。
一方で、ロミオになると悩めるロミオというか、若干神経質な感が否めず、見ていて少し疲れるキャラクターの作り方ではありました。
もちろん、それはそれで萌えるんですがw。
ジュリエット役の愛希れいかは、ただただ一生懸命やっているという感じ。
研4では致し方ないでしょうし、かなり頑張っていると思います。
「アリスの恋人」のときはまだまだ娘役になりきれていませんでしたが、もうすっかり一人前の娘役で、安心してみていられます。
その他のキャストは、特にマーキューシオは前の雪組(早霧せいな)の方が二枚ほど上手。
狂気と理性の狭間を揺れ動く様があまり出ていなかったように思います。
まさおとみりおは、全く個性の異なるキャラクターを演じ分ける(下手すると1日で両方を演じる)と言うことで、科白・歌・ダンスの量も含めて、大変な負荷だと思いますが、よくやっています。
東京公演も含めるとまだまだずいぶん見ることになるのですが、飽きるということはなさそうです。
みりおを観ているだけで飽きるどころか忙しいのですがw。
僕は前回の雪組公演を見ており、大変面白かったのでそれだけでも期待大なのに、僕が大好きな明日海りおがダブルキャストでロミオとティボルトを演じるというので、いやが上にも期待は高まります。
ロミオ:龍真咲(まさお) ティボルト:明日海りお(みりお)
ロミオ:明日海りお ティボルト:龍真咲
の2通りのキャストを見てきました。
2日続けて両者を見たので、違いがはっきりと分かって面白かったです。
まさおは典型的な王子様キャラなので、ロミオははまり役。
純真無垢な心で一途にジュリエットを愛し抜く姿にひたすら心打たれました。
雪組公演時の音月桂と全く同じ系統だと言えると思います。
一方で、ティボルトは今イチ存在感が出ない感じ。
メイクも工夫してワルな感じを出そうとしているんだけど、いかんせん王子様が無理矢理ワルな振りをしている感が拭えません。
もちろん、それはそれで萌えるんですがw。
一方で、みりおのティボルトはかなりいい。
かなり迫力のあるワルっぷりでしたが、それだけでなく、本当は自分もロミオのように愛のために生きたいのに、キャピュレット家の跡継ぎとして許されない葛藤を表現していて、深みがありました。
一方で、ロミオになると悩めるロミオというか、若干神経質な感が否めず、見ていて少し疲れるキャラクターの作り方ではありました。
もちろん、それはそれで萌えるんですがw。
ジュリエット役の愛希れいかは、ただただ一生懸命やっているという感じ。
研4では致し方ないでしょうし、かなり頑張っていると思います。
「アリスの恋人」のときはまだまだ娘役になりきれていませんでしたが、もうすっかり一人前の娘役で、安心してみていられます。
その他のキャストは、特にマーキューシオは前の雪組(早霧せいな)の方が二枚ほど上手。
狂気と理性の狭間を揺れ動く様があまり出ていなかったように思います。
まさおとみりおは、全く個性の異なるキャラクターを演じ分ける(下手すると1日で両方を演じる)と言うことで、科白・歌・ダンスの量も含めて、大変な負荷だと思いますが、よくやっています。
東京公演も含めるとまだまだずいぶん見ることになるのですが、飽きるということはなさそうです。
みりおを観ているだけで飽きるどころか忙しいのですがw。
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