日本フィル第626回東京定期演奏会2010年12月11日 14時03分

シベリウス:組曲「クリスティアン2世」
マーラー:交響曲第1番「巨人」

指揮:ピエタリ・インキネン

インキネンはフィンランド出身の若干30歳の若手。
指揮ぶりは若さに見合った颯爽としたもので、しかし演出過剰ではなく、好感が持てた。
ともすると締まりに欠く音を出す日フィルだが、きちんと統率されており、キラキラした感じの澄んだ音で、非常に僕の好みだった。
年末に第九を振るが、なかなか面白いのではなかろうか。

さて、前プロは日本では無名な曲。
決して退屈な曲ではなかったが、良い曲だとも思わなかった。
終曲の鳴りっぷりは良かったが、この曲を目当てに演奏会に足を運んだり、CDを買ったりすることはまずない、といったところ。

この日のお楽しみは何といっても「巨人」。
日頃愛聴しているのは、バーンスタインがコンセルトヘボウを振ったDGの新盤。
これはバーンスタインが思う様音に表情を込めた粘っこい表現で、昔のF1で言えば、V12エンジンが馬力に任せてモンツァを疾走するような感じ。

以前にも実演を聴いたことがあり、そのときはゲルト・アルブレヒト指揮の読響。
基本的には派手な音楽なので、wktkして聴きに行ったのだが、目の前のオケは派手に鳴っているものの、ちっとも興奮しなかった。
F1でいえば、V12エンジンがもたもたモンテカルロ市街地コースを走っているのを見ているようだった。
基本的に派手にオケが鳴ればそれだけで満足する単純なタチなのだが、このときばかりは幻滅して帰ったのを憶えている。

なので、この日も期待半分不安半分だったのだが、実に満足できる良い演奏だった。
F1で喩えれば、V10エンジンがハンガロリンクをすいすい飛ばしていくような感じ、と言えば当たっているだろうか。
こってり表情をつけることはしないが、オケをきらびやかに鳴らし、決して薄っぺらい音楽にはなっていない。
全ての音がきっちりと自分の役目を果たしており、バーンスタインとは違って文学的ではないが、(器楽的な意味で)非常に音楽的な表現だったと思う。
クライマックスの迫力は尋常ではなく、終結部の、遅く始めて強烈なアッチェレラントをかける、フルトヴェングラー風の表現も実に効果的だった。

定期会員になると、同じオケなのにさまざまな表情を見せるのが面白い。
満足できる演奏、不満な演奏どちらも聴くことになるが、いずれにせよ勉強になる。
無論、この日は大満足して家路に着いたのだった。

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