【クラシック】インバル&都響 新マーラー・ツィクルス ツィクルスⅧ@みなとみらいホール2014年03月11日 00時09分

マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」
ソプラノⅠ/澤畑恵美   ソプラノⅡ/大隅智佳子
ソプラノⅢ/森麻季    メゾソプラノⅠ/竹本節子
メゾソプラノⅡ/中島郁子 テノール/福井敬
バリトン/河野克典    バス/久保和範
合唱/晋友会合唱団(指揮/清水敬一)
児童合唱/東京少年少女合唱隊(指揮/長谷川久恵)
指揮/エリアフ・インバル 管弦楽/東京都交響楽団

音楽という形而下的なものを超えた圧倒的な体験であり、今までに聴いた最も感動的な音楽である朝比奈隆と都響によるブルックナー8番を凌駕する、至福の時間でした。
神秘的だったと言ってもいいと思います。

規模はバカでかいですが、インバルの指揮は非常に細部に気を遣っており、最強奏時でも音がダマにならず各パートがきっちり分離して聞こえており、時折顔を出す室内楽的な部分では非常に緻密な響きを導き出していました。
また、金管の最強奏も、音の大きさよりも艶や張りを重視しており、力づくではないけれども強く伸びる音を常に出していました。

テンポの動きは非常に大きかったのですが、その変化が非常に自然であり、その音楽にあるべきテンポ設定であるため、「大きくテンポが揺れている」ということを殊更に感じることはありませんでした。
さながら、F1ドライバーがサーキットでマシンを操るがごとく、といったところでしょうか。

第Ⅰ部のラストは強烈なアッチェレラントから大きくリタルダンドをかけ、大合唱とバンダを含む金管の輝かしい響きをたっぷりとホール全体に満たし、完全に心は現実を離れ陶然とさせられ、涙があふれて止まりませんでした。
(「涼宮ハルヒの憂鬱」TVアニメの最終話で神人が世界を破壊するシーンで使われた音楽です)

ここで完全にイッてしまったので、第Ⅱ部はしばらく賢者タイム。
インバルの理知的かつ雄弁な音楽に酔わされているうちに回復し、そしていよいよ全曲のクライマックス。
神々しい合唱に続き、3階席後方の上手・下手に配されたバンダも含めた大編成の金管群の輝かしい響きが前からも後ろからも聞き手を包みます。
圧倒的な響きの洪水の中で空間的感覚を失い、ただただ呆然と奔流に身をゆだねるのみ。
気がつけばまたしても滂沱の涙を流していました。

都響の演奏を聴くたびにその上手さを褒めていますが、本当に上手い。
ホルンと金管セクションの盤石ぶりには舌を巻くばかり。
ホルン首席の上手さは格別です。
また、ラストのクライマックスでインバルはものすごくテンポを落として和音を引っ張るのですが、よく金管セクションが頑張ったと思います。

フロントローに四方恭子(コンマス)、矢部達也を配し、他の弦のパートも特任首席や首席を揃えており、都響の気合いのほども伺える万全の体勢でした。

晋友会はさすがというべきか、膨大な合唱パートを暗譜で歌いきりました。
児童合唱は真っ白な修道士のマントみたいなものを着ており、ちょっと天使っぽい感じでした。
各独唱も含め、完全にインバルの楽器となっており、素晴らしかったです。

あまりにも規模が大きいため、録音にはその全ては収まりません(5.1chであればいい線はいくかもしれませんが)。
こんな素晴らしい経験を日本にいながらにしてできるとは、本当に幸運です。
貴重な耳の宝をまた一つ増やすことができました。