【雑記】写真2013年05月04日 01時11分

今さらですが、写真って面白いですね。
特に宝塚が好きなので、生徒(タカラジェンヌはみな正式には宝塚音楽学校の生徒なのです)の写真をたくさん見る機会があるわけですが、改めて撮る立場の視点も交えて見るとまた違った面白さがあります。

「宝塚グラフ」という生徒の写真満載の雑誌があります。
表紙&巻頭は著名写真家によるもので、僕が再び購読するようになってから2回変わっています。(篠山紀信氏→ケイオガタ氏→中山かつみ氏)
当たり前ですが、カメラマンによって全然テイストが違うのです。
僕の大好きなみりおも3氏の手で表紙&巻頭を飾っているのですが、見比べると面白いです。
篠山紀信氏は露出がオーバー気味で、演出も特になくてキラキラしたスターをそのまま撮る感じ。
ケイオガタ氏はぼかし気味でやや暗め、表情や仕草も含めてアンニュイな感じ。
中山かつみ氏はかっこいい瞬間を解像度高めのカリッとした手触りで切り取る感じ。
それぞれにみりおの魅力を引き出していて、見とれてしまいます。
絵にタッチがあるように、あくまで機械による仕事である写真にもタッチがあるというのが興味深いところです。

一方で、表紙&巻頭以外にもたくさんの写真が「グラフ」誌には掲載されているのですが、それらは専属のカメラマンが撮っています。
そうした写真にはカメラマンの演出は感じられず、生徒自身の個性や演出を邪魔しないように技術的に優れた撮り方に徹しているように思えます。
従って生徒のありのままの姿が切り取られるので、下級生はぎこちなく野暮ったいし、上級生は巧みに自分を演出したかっこいい(可愛い)写りになっています。
これはブロマイドや公演プログラムの写真にも同じことが言えます。

僕は写真の醍醐味は人物写真にあると思っているのですが、一方でこれほど難しいものはないとも思います。
一度スナップではなくがっつり人物を撮ってみたいものです。

【クラシック】都響第752回定期公演Aシリーズ2013年05月12日 00時38分

モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」
ブルックナー:交響曲第9番
指揮:エリアフ・インバル
ピアノ;児玉桃
東京都交響楽団

モーツァルトは初聴きでしたが、なかなか可憐で素敵でした。
何より、ここのところ千尋さんのエモーショナルというか、とにかくぶっ叩くピアノばかり聴いていたので、何だか心洗われるような気がしました。
ただ可愛い一辺倒ではなくて、フィナーレではピアノのカデンツァから始まるなど、なかなか一筋縄ではいかないところがモーツァルトらしいところといえるのでしょう。

ブルックナーは圧巻の一言。
生で聴くのは今や伝説と言ってもいいヴァント&北ドイツ放送響の来日公演以来ですが、それに劣らぬ畢竟の名演でした

基本的には遅めのテンポながらも、機械的なインテンポではなく、曲の表情に合わせて作為的にならないよう自然にテンポを操作していました。
細部の彫りも深く、金管やホルンを効果的に鳴らすことはもちろん、低弦や木管についても細かいところまで気を配っており、迫力と繊細さを巧みに両立させていました。

特筆すべきは都響の上手さ。
最後まで力強さが衰えることなく、かつ正確な演奏でインバルの表現を完璧に音にしていました。
最後まで金管が息切れしなかったことにまずブラボーでした。
第一楽章のクライマックスではどこまでも膨らんでいくような素晴らしいクレッシェンドを聴かせてくれましたし、第三楽章の天使のラッパも実に輝かしく、心奪われました。
最大で9本というホルン部隊も分厚い音で強力にインバルをバックアップ。
弦もどんなに強く力奏しても力任せになることなく、またアンサンブルも乱れませんでした。
スケルツォが圧巻だったことは言うまでもありません。
木管は繊細で美しく、厚塗り一辺倒ではない曲の魅力を十二分に引き出していました。

平日にもかかわらず、ホールは5階席まで満席。
さすがにこのプログラムはみな聞き逃せないと思ったようです。

【チューリップ】4oth Memorial Tour "The Live"@仙台・盛岡2013年05月19日 22時56分

僕にとって
・アーティストはモニタースピーカーの音を聴いて演奏する
・MCは一言二言
・歌いながら水なんか飲まない
・ギターやベースにはケーブルが繋がっている
というのがライブのスタンダードな姿だったので、近年になって声優さんのライブに参加するようになって上記の事柄全てが当てはまらないので、へえと思ったものです。
上の3つはともかくとして、何で今はみんなワイヤレスなんでしょうね。
ギターやベースが舞台上を動き回って、ケーブルが絡まりそうになったら舞台袖からローディーが飛んできて素早く捌く、という光景に萌えるのですが、声優さんのライブでは各楽器に一人ずつローディーがついたりはしないんでしょうか。

東北に来た、といったところで何が変わるわけでもなく、ライブの中身はいつも通りだったのですが、僕が見てきた中では仙台が一番メンバーのテンションが高く、熱い公演だったように思います。
特に「Shooting star」での盛り上がり方が、それ以前の公演とは違っていました。
圧倒的に美しいコーラスが安部さんの詩情たっぷりのギターと共に熱を帯びて殊更に輝いており、思わず涙ぐんでしまいました。
メンバーも感極まっていたようで、次の「心の旅」では姫野さんが珍しく涙を堪えながら歌っていました。

メンバーを後押ししたのが客席の盛り上がり。
どこの会場よりも盛り上がっており、黄色い歓声も多かったです。
それに応えてか、今年に入ってからアンコール2曲目が「私のアイドル」から「あの娘は魔法使い」に変わっていたのを、元に戻して歌われました。
後者の方がキーが低いので、安全を見て今年からそちらにしたのでは、と勝手に思っているのですが、盛り上がりはやはり前者の方が上。
イントロが始まった途端に会場のボルテージが爆発して、大盛り上がりとなりました。
盛岡でもこれは変わりませんでした。

演奏しているのは一人を除いて60代だし、客席も大半が40代以上なわけですが、僕が出入りしているライブの中で一番熱いのがチューリップのライブだと思います。
ファンのアーティストや楽曲に対する「好き」の度合いが比較にならないほど深いのですから、ある意味当然と言えるかもしれません。

メンバーも全然老け込んではいません。
何より演奏する姿がカッコいいのです。
安部さんの音の最後に左手を素早くネックの上を滑らす仕種や、上田さんの右手でスティックを回す仕種など、他の現場のアーティストが敵うべくもありません。

今では縁あっていろいろなアーティストのライブに参加していますが、一番好きなアーティストはやはりチューリップで、これは揺るぎません。

【吹奏楽】佐渡裕&シエナ・ウインド・オーケストラ演奏会20132013年05月26日 22時21分

1.R.V.ウィリアムズ 「イギリス民謡組曲」
2.J.B.チャンス 「朝鮮民謡の主題による変奏曲」
【音楽のおもちゃ箱のコーナー】
3.「シング・シング・シング」
4.「主よ、人の望みのよろこびよ」
5.挟間美帆「Mr.O」(委嘱新曲)
6.山下洋輔 ピアノ協奏曲第1番「エンカウンター」より第4楽章(編曲:挟間美帆)
7.G.ガーシュウィン 「ラプソディー・イン・ブルー」(編曲:高橋徹)
【アンコール】
8.ラヴェル「ボレロ」より(ピアノ独奏)
9.スーザ 「星条旗よ永遠なれ」

ピアノ:山下洋輔 指揮:佐渡裕 シエナ・ウインド・オーケストラ

前半の2曲は曲・演奏ともにオーソドックスなもの。
巧まずしてしかし抜群の技巧を聴かせるあたりはさすがというべきでしょう。

3は日頃ベニー・グッドマンのカーネギーホールコンサートの実況盤で愛聴していますが、それと比べるとずいぶんと洗練された演奏。
音楽の語法が異なるので当たり前なのですが、面白かったです。
こういう曲はやはり本職が演奏した方がはるかに楽しいです。

4はもっと金管を利かせてブルックナーみたいにすると面白かったんじゃないかな、と思いました。
5は新進のジャズ作曲家挟間美帆の新作。
なかなか堂に入ったビッグバンドサウンドで、楽しかったです。
どんな人なのか気になったので調べてみたら、佐渡の言う通り確かに結構な別嬪さんでした。
http://www.jamrice.co.jp/miho/index.html

6は和楽器である絞太鼓とピアノの丁々発止のやりとりが大変スリリングでした。
ピアノはほぼ即興とおぼしく、お互いを探りながらの進行はまさにジャズのステージ。
佐渡が束ねる吹奏楽の切り込みも鋭く、手に汗握る好演でした。

7は山下洋輔の独壇場。
佐渡がトークでも言っていた通り、カデンツァに入ると「いつ帰ってくるんだ?」と心配になるくらいでしたが、時に腕全体で鍵盤をぶっ叩く奏法も披露してくれたり、大変愉快でした。
トータルでは、やはり弦楽器がないと「ブルー」の部分の表現が十分に出てこないので、若干物足りなくはありましたが、ピアノの力演がそれを補っており、大変興奮しました。

8は山下がラムルー管にソリストとして出演したときに(指揮は同じく佐渡)アンコールで弾いたものだそうで、ある意味この日の白眉。
「ボレロ」のテーマを巧みに変奏し、またしても時に鍵盤をぶっ叩きながら、オリジナル同様に最後のクライマックスを築き上げ、大変エキサイティングでした。
9はいつも通り楽器を持ったお客さんも舞台に上げての大団円でした。

今回のプログラムは、案の定というべきか山下洋輔がほとんど持って行ってしまって、吹奏楽のすごさという意味では薄かったような気がします。
ただ僕は音楽として面白ければそれでいいので、非常に面白い演奏会でした。

音楽自体とは別の話ですが、山下のピアノを聴いて、クラシックの演奏家がいかに大きな音を出しているかを実感しました。
前に千尋さんが群響と「ラプソディー・イン・ブルー」を協演するにあたり、大きな音を出すためにウェイトを増したということを話しており、ほんまかいなと思っていたのですが、やはりクラシック奏者とジャズ奏者では出す音のボリュームが異なるようです。