【みのりん】私の頭の中の消しゴム 5th letter2013年06月17日 23時45分

この公演が発表されたとき、実は非常に複雑な気持ちでした。
真綾(坂本真綾)が同じ別所哲也さんと組んだ公演を前回4th letterの際に見ており、それが実に素晴らしかったからです。
演目が同じで相手役も同じとなれば、どうしたって比較をしてしまいます。
そして、数々の舞台を踏み菊田一夫演劇賞を受賞する実力の持ち主に、舞台経験はほぼゼロに等しいみのりんが演技の力で敵うとは到底思えません。
作品はともかく、相手役まで同じかよ……というのが偽らざる第一印象でした。

しかし、その後考えを改めました。
僕はプロ野球も高校野球も両方好きですが、高校球児のプレーを見るときにプロと比較して「こいつら下手だなあ」と思うことはないわけで、若干語弊があるかも知れませんが、今回もそれと同じ心構えで臨もうと思ったのです。
みのりんがどれだけの力を発揮してくれるか。
別所さんの力を借りることでどんな新しい扉を開くことができるのか。
そんなことを考えると、「Contact」ツアーに参加したときのようなドキドキが胸によみがえるのを感じました。

みのりんは本当によく頑張っていました。
稚拙な言葉ですが、その一言に尽きると思います。
真摯に役と向き合い、演技するということに向き合い、薫という女性を表現することに没入していることがよく分かりました。

朗読劇ではありますが、クライマックスは薫の病状が悪化し、施設で浩介と再会する場面だと思っています。
最早科白もなく、ただ椅子に座って佇んでいるだけ。
その「演技」が、役者の力を最も端的に表すものだと僕は考えています。
真綾は人間性を完全に失った無表情でした。
それは背筋が寒くなるほどの迫真の表現で、しかしそんな姿になってなお浩介を愛する心は失っていない薫に激しく感動したのでした。

みのりんは無邪気な微笑を浮かべていました。
何もかもを失って、しかしただ一つ浩介への愛が残った。
そういう表情でした。
どちらが良いとか正しいとかそういう次元の話ではもちろんないわけで、幼い子供のような微笑みを浮かべるみのりんに強く心打たれました。

今回改めて実感したのは、別所さんの演技の懐の深さ。
実に自然で血の通った感情表現、舞台の空気を瞬時に換えてしまう存在感。
みのりんを巧みにリードして二人の世界を築き上げていました。
別所さんあっての今回の舞台だと思います

もうちょっと本から顔を上げて表情を見せた方がいいな、とか気付いたことはいくつかあります。
それはそれとして、間違いなく新たな物を一つつかんだみのりんのこれからがとても楽しみです。