【宝塚】月組大劇場公演『ベルサイユのばら』(盛大にネタバレ)2013年01月29日 23時51分

※ストーリーを含むネタバレ多数なので、閲覧にはご注意ください。

本役と、まさおとみりおが入れ替わる役代わり公演を2回ずつ観ました。
土曜日が本役→役代わり、日曜日が役代わり→本役です。
以上を踏まえての、公演レポです。

物語の組み立てについて、首を傾げるところ無しとはしません。
最初からアンドレの眼は悪いし、オスカルは自由主義に目覚めて衛兵隊に転属してしまっているし、フェルゼンのことは諦めたことになっているし、というのは素っ飛ばしすぎでないか、と。
一応説明的な科白が一言あるものの、一体どうしてアンドレの眼が悪いのか、ということになるでしょうし、フェルゼンがオスカルに別れを告げに来るシーンも、「こいつ何言ってんだ?」ということになるでしょう。
のっけからオスカルが自由主義に燃えているところも、ピンときません。
マラソンで言えば、ペースメーカーが外れた30km地点から始まるようなものです。
僕は原作を読み込んでいましたから、どういう時点から始まったのかすぐ分かっていましたので特に問題はありませんでしたが、原作をよく知らない状態で観たら、よく分からなかったんじゃないかと思います。

舞台の造り自体も古めかしいものがあります。
もちろん初演当時から受け継がれてきた伝統というものなんでしょうが、少なからず違和感を覚えました。
今時滅多にしないべったりしたブルーのアイラインにはびっくりしましたし、「オスカーーール!」のようにやたらと長く伸ばす呼びかけの科白にも面食らいました。
バスチーユ戦の群舞の振り付けも時代を感じさせるもので、とにかくえらく時代がかった舞台だなあ、と思ったものです。

土曜日の午後の公演では、役代わりの難しさもひしひしと感じました。
たった1時間のインターバルで、まさおがオスカル→アンドレ、みりおがアンドレ→オスカルと入れ替わって演じるわけですが、今イチ切り替わっていない感があるのです。
アンドレはあまり男っぽくないし、逆にオスカルは女っぽくない。
衣装と化粧と科白が入れ替わっただけで、あまり役そのものが替わった感じがせず、観ていてものめり込むことが出来ず、首を傾げているうちに終わってしまいました。
それでも、最後のあたりではだいぶ練れてきた感があったので、役代わりから始まる翌日には期待が持てました。

とまあ、いろいろケチをつけようと思えばつけられるのですが、それを差し引いても素晴らしかったです。
まずまさおのオスカルとみりおのアンドレが素晴らしい!
まさおは典型的な白馬の王子様タイプの男役なので、男装の麗人を演じさせてはまらないわけがありません。
基本的には毅然としているのだけど、ちょっとした仕草の端々が実に女性的で(父親のジャルジェ将軍に殴られて倒れ込むところとか)、また科白回しも女性が男言葉を使っている感じがよく出ていて、非常に上手かったです。
アンドレもどちらかといえば湿度の高い男ですが、みりおは可愛い顔に似合わずこの手の男がぴったり合うので、感情移入して観ることが出来ます。
話の辻褄がどうのとかそういうことは完全に抜きにして、二人がついに結ばれるシーンや、倒れるシーンは涙なくしてみることは出来ません。

びっくりしたのは、ラストの有名な馬車のシーン。
銃に倒れたオスカルを、ペガサスの牽く馬車に乗ったアンドレが迎えに来る感動的なシーンな訳ですが、この馬車がすごい。
ここまでやるか、とさすがの僕も度肝を抜かれました。

お芝居が終わった後には15分ほどの短いショーがついています。
(2幕物の長いお芝居をやるときの慣例)
ここでの、故喜多弘先生振付のボレロがもう、素敵すぎて鼻血物。
みりおが女役で、身体のラインがはっきり分かるぴったりしたドレスで出てくるんですが、これがもう色っぽくて。
しかも、お芝居でアンドレをやったときは、化粧が男役なので、彫りが深くなる分ものすごく妖艶。
それだけでも素敵なのに、まさおがみりおの肩から胸、腰までを愛撫する振りでは、もうマンガやアニメなら鼻血を通り過ぎて喀血するところです。
瞬きするのも惜しいデュエットダンスです。

娘役トップのちゃぴの出番があまりないのがちょっと可哀想な気もしますが、「ロミジュリ」ではまだ一杯いっぱいなところがあった彼女が、すっかり立派なトップスターになっていて、感心しました。
脇役では、マギー演じるアランが儲け役でした。
さすがの演技力で、舞台全体をキリッと引き締めていました。

役代わりも、きちんと切り替えが出来ている場合は、本役と同様に面白く観ることが出来ます。
特に、アンドレが死ぬシーンで、みりおが女の声で「アンドレー!」と叫ぶシーンは、哀しいシーンではあるのですが、きゅんときてしまいました。

何だかんだで作品自体にやはり力があるし、演じるスターが魅力的なので、立派に宝塚の歴史に残る名舞台になっていると思います。
特にまさおファン、みりおファンなら何度観ても飽きることはない作品です。
(実際、日曜日は午前・午後ともものすごい立ち見の数でした)
僕が観られるのはあと東京での2公演のみですが、悔いの残らないよう両の眼を見開いてのぞみたいと思います。