【山中千尋】Live @Billboard Live TOKYO2012年06月25日 00時21分

パーソネル
山中千尋(p)
江ノ口美穂(b)
岡田佳大(d)

整理番号21番だったんですが、「え、どうしてそこが空いてるの?」という、千尋さんの真正面3列目が空いていたので、迷わずそこに着席。
上手を向いているのでベースもドラムも見渡せる完璧なポジションでした。

何より、千尋さんが目の前5mのところでスタインウェイを目一杯ドライブしてくれるのです。
僕もずいぶんいろいろなライブに参加しましたが、一番プレイヤーが近いライブだったと思います。

ステージに登場するなり、アメリカのライブで演奏中にヌーブラが落ちてしまった話を始め、場内は爆笑。
「しばらく(脚の間に)挟んで演奏してたんだけど、疲れてきたのでマネージャーに『取って』って言ったら、『無理です』って」
「女性の皆さんは、ヌーブラをつける際は、ショーツの色に合わせるんじゃなくて、床に落ちても目立たないように床の色に合わせた方がいいですよ」

誰がここですべらない話をしろと。
ジャズメンって女性もアレゲなのね、と思い知った一幕でした。

先日神奈川県民ホールでのライブを堪能しましたが、箱が狭いせいもあって、とにかく音楽の密度の濃さが比較になりません。
また、プレイヤー同士の距離が近いせいか、お互いの呼吸を確認しながらのプレイングで、とてもスリリングでした。
2ステージ目ということもあってか、のっけから千尋さんもほぐれており、テンションが高かったです。

ピアノを弾く手元を凝視していましたが、凄いとしか言えません。
とんでもない速さかつ強さで弾いているのに、1音1音が全て粒だっており、塗りつぶしたような音には決してなりません。
ただただ呆れて見ていました。

ベニー・グッドマンの「Sing Sing Sing」から始まったんですが、どこにその要素があったのかさっぱり分かりません。
一応伝説のカーネギーホールライブで聞き込んでいるはずなんですが。
楽しかったですけどね。

「Insight Forsight」は、芸人のほんこんさんをイメージした曲だそうで、タイトルも「ほんこん」だったのだとか。
ところが、BSフジの報道番組のテーマ曲に採用されるにあたり、「ほんこん」ではまずいのでそれらしいタイトルに変えたのだそうです。
曲自体はどこがほんこんさんなのかさっぱり分からない、情熱的な曲ですが。

本編ラストはビートルズカバーメドレーで「BECAUSE」~「YESTERDAY」~「MICHELLE」。
特に「MICHELLE」が今日の白眉で、とんでもないハイスピード。
シンバルレガートは、『FOUR & MORE』のトニー・ウイリアムズを彷彿とさせるテンポで、ただただ唖然とするばかり。
思わず立ち上がりそうになるのを堪えるのが大変でした。

アンコールでは、「Rain, Rain and Rain」をやろうとするも、「これさっきやったからやめよう」と言って急遽変更。
メジャーデビュー前の曲をやると言い出したのはよかったのですが、ベースの江ノ口さんが楽譜を持って「これでいいの?」と言いたげにきょろきょろしていたのが面白かったです。
そもそも、アンコールでやる予定だったらしい「星に願いを」を4曲目(だったかな)にさっさとやってしまうし、セットリストそのものが自由というか、ハプニングです。

メンバー紹介の時にたまげたのが、「岡田さんはアート・ブレイキーに招かれてNYに行き・・・」。
なんだそれ?
道理で凄腕なわけだよ。
日本のジャズ界も怖いわあ、と思った次第です。

僕も酒を飲まなければもうちょっと経済的な人間なのですが、当然こんなおいしいシチュエーションではお酒も進むわけで。
ビール1パイントにオリジナルカクテル、白ワイン(ドイツ産リースリング)をハーフボトルきこしめしてすっかり良い気分に。
こういうところで呑みながらみのりんや真綾が聴けたら確実にイクなあ、と思いました。

音楽が火花を散るようにして生まれる、まさにその現場を至近距離で体験できたのは、僕の音楽人生にとって大変素晴らしい経験でした。
耳の宝がまた一つ増えました。