【歌】坂本真綾 小田和正 畑 亜貴2010年10月21日 00時00分

○坂本真綾:「DOWN TOWN」・「やさしさに包まれたなら」・「悲しくてやりきれない」
まず生成りの手触りの音にホッとする。
生の楽器で曲を作るのは手間も技術も必要だが、真綾のチームはそれらを惜しまないので、特別なことをしているわけではないのに一歩抜きん出たものができる。

最近はごりごりの音を詰め込めるだけ詰め込んで、音楽的にはどうか知らないが、一番肝心な「歌」を置き去りにしたような曲が多いだけに(僕の知る限りでは、最近のエレガはこの傾向が強い)、さすがに真綾の歌は、「歌」と「音」が有機的に融合していて、実に聴いていて心地良い。

一曲目は服部隆之率いる特別オーケストラ、二曲目はDEPAPEPEと、バックに控えるは錚々たるメンバー。
三曲目のピアノ・トリオのJAMも、寡聞にして存じ上げないが、ミディアムテンポの中にちらりと毒をかいま見せて、なかなか一筋縄ではいかない感じ。
そんな音をバックに、真綾は軽やかに歌い上げる。
久しぶりに、新曲で良い歌を聴いた。

「魔法の黄色い靴」とか「人生ゲーム」とか初期チューリップの歌を歌わせたらすごくはまるような気がするのだが、そんな機会はないものだろうか。

録音が極上なのは、言わずもがな。

○小田和正:「さよならは 言わない」
昨年出た新譜を買い忘れていたことに気付き、慌ててぽちった一曲。
自らの名曲のアンチテーゼのようなタイトルと歌詞が、流れた年月を思い起こさせる。

弦と木管が主体のサウンドをバックに、60歳を過ぎても透明感を失わない美しい声が切々と歌を紡ぐ。
真綾は良い歌を作ろうと努力しているが、小田さんはただ心のおもむくまま歌っている。

僕とて小田さんの半分くらいしか生きていないのだから、えらそうなことは言えないが、ようやく小田さんが歌う、眩しかった過去を振り返って眼を細めるような気持ちに共感ができるようになってきた。

ボーカルを存分に活かした録音で、実に聴きやすい。

1曲しか入っていないから@525。
小田さんだからできることかもしれない。

○畑 亜貴:「万能に滾る如何様」「オマエのココロは貧乏」「絵になる欺瞞」
一曲目は歌詞からしてダークな歌かと思ったら、何だか脳天気な曲調でいささか拍子抜け。
歌詞はかなり好きなのだが、どうも曲と合っていない気がする。
これが畑さんの個性のような気もするが、いささか得心がいかない。

二曲目は「みんなのうた」に採用されそう。
三曲目は暗中模索といった感じで、ここでやっと納得がいった。
どうも期待値が高かっただけに、想像していたものと出来がだいぶ異なったので、肩すかしを食った気分である。

録音はランティスにしては良い方だと思う。

しばらくは真綾と小田さんのヘビロテかな。

日本フィル第624回東京定期演奏会2010年10月23日 23時08分

オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
ラヴェル:バレエ組曲「マ・メール・ロワ」(抜粋)
ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」※

指揮:尾高忠明
※バリトン:三原剛
※合唱:晋友会合唱団

第一印象として、「日フィルってこんなに上手かったっけ」というのがありました。
前プロ2曲は弦と木管だけなので、オケが上手くないとどうにもならないのですが、細部まで練られていて、びっくりしました。
弦がものすごく繊細だったし、特にいつもは荒い木管がとても丁寧でした。
尾高の統率力の賜物なのでしょう。
簡潔な指揮ぶりですが、オケの隅々までコントロールしている様がよく分かりました。
指揮者によってオケの個性ががらっと変わるのが、オーケストラを聴く醍醐味です。

殊にラヴェルが素敵でした。
前日にモントゥー指揮の同曲を聴いたのですが、こちらがおばあちゃんが語るおとぎ話だとすれば、尾高の指揮は若いお母さんが語るお話といった風情。
パリッと冴えた音で、でも叙情性には富んでいて、楽しく聴きました。

「ベルシャザールの饗宴」は編成から変態。
3管編成のオケに、打楽器14、トランペット3・トロンボーン3の別動隊が2対、独唱バリトンに合唱。

そして音楽も変態。
奢りの極みにあるバビロンの王ベルシャザールの退廃と豪奢と破滅、そしてイスラエルの民の神への賛美を歌ったオラトリオで、約40分の全編、吠えまくる大管弦楽と叫びまくる合唱ととんでもないリズムの饗宴。
音の洪水が、モダンジャズもかくやという複雑なリズムの中を奔流のように猛り狂う様はまさに圧巻でした。
鳥肌立ちっぱなし。
すごいものを聴きました。

とにかく大規模な音楽なので、おそらくCDでは満喫できないと思われます。
クラシックファンは是非ライブで聴くべき名曲。

素晴らしい一夜でした。