茅原実里『Parade』2008年11月29日 16時48分

文句なしに満点以上、素晴らしいアルバムです。
全14曲で1つの作品として完結しており、途中から聴くことも途中でやめることもできず、一度プレイヤーに乗せたが最後70分間スピーカーの前から動けなくなってしまうのが困りものです。

みのりんの声は前作『Contact』に比べ格段に強く、深くなっています。
前作では歌うことに一生懸命という印象が強かったですが、今作では一曲一曲異なる歌の世界を的確に表現していて、余裕すら感じさせます。

録音がいいのもうれしいですね。
音数が多いし、みのりんの声の細かいニュアンスを感じる意味でも、解像度が高いシステムで聴くことをお薦めします。

「透明パークにて」
序曲でありながら今はもう過ぎし祝祭への追憶の歌。
これから始まるパレードへの期待を膨らませてくれます。

「Voyager train」
鋭い弦に複雑なリズムが絡む序奏で既にノックアウト。
見た目はコンビニのレジにいるフリーターの兄ちゃんみたいですが、菊田さんの腕の冴えが炸裂です。
複雑かつキレキレのリズムが菊田サウンドの最大の特徴だと思うのですが、歌うのは難しいでしょう。
詞も素晴らしいですね。
人生には出会いと別れが交錯するけれど、この新しい出会いから共に歩んでいこうという強いメッセージ。
みのりんも凛とした強い歌唱で僕たちに呼びかけます。
みのりんとの旅の始まりです。

「Prism in the name of hope」
みのりんを先頭に始まったパレードは霧を払い、闇を照らして進んでいく。
そんな様が眼に見えるような、元気を振りまくごきげんなポップチューン。
強さと優しさが黄金比率で混在するみのりんの声が最高です。

「Fairy Tune」
みのりんの優しさにほっと一息つく佳作です。
ただカワイイだけでなく、大人っぽい落ち着いた雰囲気があって素敵です。
幻想的なパレードの衣装や飾りつけ、といったところでしょうか。

「Lush march!!」
みんなもっとパレードにおいでよ、というみのりんからの強いメッセージ。
アップテンポの歌ではありますが、人生を生きる切なさも歌われています。
一筋縄ではいかない畑さんの詞の力を感じる一曲です。
ライブでは盛り上がりそうです。

「そのとき僕は髪飾りを買う」
幼き日の祭りでのちょっと切ない想い出が歌われます。
祭りには一抹の淋しさがつきもの。
ちょっと少年っぽい落ち着いたみのりんの歌が胸をキュンとさせます。

「Melty tale storage」
シングル既出曲は、既にレビューしているのでここでは除きます。
曲とは関係ありませんが、僕の使っているスピーカーはモニタースピーカーの系列なので、発売時期が異なるシングル曲2曲だけ音作りが微妙に異なるのが分かります。

「蒼い孤島」
激しく感情をぶつける仄暗いラブソング。
みのりんの歌も情熱を剥き出しにしており、新境地と言えると思います。
カーニバルのまた違った一面を描いた曲です。
ライブで聴くのが楽しみな一曲。

「光」
一転して、抑制が利いているが故に秘められた想いの強さが際立つラブソング。
こだまさんの詞が最高です。
別れを歌ったラブソングが大好きな僕には、たまらない一曲です。
みのりんも別れを選んだ女性の情念をリアルに表現しています。
これもライブで聴くのが楽しみな一曲。

「Paradise Lost-at next nest-」
冒頭の大胆なアレンジ変更から、全然別の歌に生まれ変わっていることを期待したんですが、後はオリジナルと変わっていなかったので、ちょっとがっかりしました。

「FUTURE STAR」
やっぱり菊田さんのアレンジには興奮させられることを実感する一曲。
グイグイこちらのハートに斬り込んできます。
夜になって最後の盛り上がりを見せるパレード。
ライブでも盛り上がりそうです。

「花束」
祭りが終わって、また再会を約する歌。
さようならの歌ではないし、可憐な歌なんですが、とても切ない気持ちにさせられます。
ライブではLa la laの部分を合唱できるといいと思います。

「everlasting...」
とても強いメッセージが込められた一曲。
何度聴いても泣きそうになってしまいます。
最後の一節はみのりん一人のみならず全てのファンの思いだと思います。
今度のツアーではおそらくラストナンバーになるでしょうが、今から正気を保てる自信がありません。

何度聴いても飽きることはないし、聴くたびに新しい発見があります。
こんな歌を楽しむことができる幸せを噛みしめながらプレイヤーの再生ボタンを押しています。