茅原実里『Contact』2007年11月05日 23時10分

本日は予定を変更して特別番組をお届けします。
・・・って、こっちの方が通常か。

動画や音声のダウンロードを一切しないので、現在のネット接続環境はすこぶる良好なんですが、なぜかサイトのアップデーとだけが出来ず、更新のネタはあるにもかかわらず放置せざるをえない状態となっております。

今日のこのレビューも本来はサイトに載せたいのですが、遅くなってしまうので、取り急ぎこちらでアップする次第です。
あーやの『LOVE★GUN』のレビューも書いたんですが、今のところ眠ったまま。
気が向いたらこちらに一旦掲載しようかと思っています。

ちなみに、このアルバムは僕がアメリカに来た後に発売されたものですが、畏友らぴさんに国際郵便で送ってもらい(会社宛で・笑)、発売後早々に聴くことが出来ました。
改めて、この場を借りてお礼申し上げます。

(以下レビューですが、ですます調でレビューを書くとどうも文章が締まらなくなるので、一時的に文体を改めます)

茅原実里『Contact』:★★★★☆

すごくきれいというわけではないけれどもなぜか人目を惹く人、あるいはすごい才能があったりするわけではないけれどもなぜか注目を集める人、というのがいる。
彼女の声にもそういう類の魅力がある。

突き抜ける高音で酔わせる、というわけではないし、パンチが効いてどすんと腹に響く、というわけでももちろんない。
テクニックで聴き手を唸らせるわけでもない。

有り体に言えば特徴のない声なのだが、しかし彼女の声は耳からすうっと心に染みこんでくるのである。

以前『君がくれたあの日』のレビューで彼女の声を水と表現したが、手前味噌だがそれが的を射ていることを改めて実感した。
何の味も付いていないが、だからこそ飽きることがない。
そして何の栄養もないが、いつでもいくらでも吸収することが出来るのである。

◎Contact
一番最初は会社から帰る車中で聴いたのだが、出だしから圧倒されてしまって、ウィンカーとワイパーを間違えてしまった。
初っ端からこうきますか。
みのりんはもちろん、作り手全体の野心をびんびんに感じる。
こうでなくては、身銭を切って音楽を聴く意味などない。

みのりんに足りないのは影の部分だと思っていたけれども、こうまで見事に「ブラックな」一面を見せつけられると、唸るしかない。

◎詩人の旅
「too late? not late...」と並ぶ、このアルバムの双璧。
みのりんの声は、華奢なように聞こえるが、とてもよく伸びるしかなり強靱だ。
この勁さに、僕はとても惹かれる。
この曲はぜひライブで聴きたい。
ゴリゴリ押す打ち込みのビートに、変幻自在に舞うストリングスの組み合わせもたまりまへんな。

◎ふたりのリフレクション
この曲のように優しく歌うときのみのりんは、微笑んでいるのが見えるようで、とても素敵だ。
僕はどちらかといえば勁さを見せるみのりんの方が好きだが、こうした表情の彼女の方を好むファンもおそらく多いだろう。

◎純白サンクチュアリ
改めて聴いても、大変な完成度である。
フレーズによって表情がめまぐるしく変化するが、その豊かな表現力には脱帽するしかない。
サビの部分は詞も大変良く、favoriteな一曲である。

◎Dears~ゆるやかな奇跡
「ふたりのリフレクション」と若干かぶるが、こちらはあえて色を付けないで歌っているのが素晴らしい。
歌そのものも悪くないが、彼女自身によるコーラスワークが聞き所だと思う。

◎Cynthia
詞・曲ともに90年代のライトポップスっぽい作りは正直今時どうかとは思うが、みのりんの艶っぽい一面に触れられるのはうれしい。
特に最後のサビのフレーズがコーラスパートだけで歌われるところは、ゾクッとしてしまう。
実はかなり低音も出せるところが、歌の幅を広くしていると思う。

◎sleeping terror
勝手に「長門系列」の歌だと思っているのだが、もっと徹底しても良かったのでは、と個人的には思っている。
恐らく意図的にアニメっぽい声になるのを避けて歌っているのだと思うが、一曲くらいは「無音」の延長線上にある歌があっても良かったのでは、と思うのはわがままだろうか。

◎too late? not late...
作りとしてはこの曲も90年代のテイストだが、詞と声の魅力に否応なしにねじ伏せられてしまう。
僕は財津和夫と小田和正が書く詞以外にはまず惹かれることのない偏屈者だが、この歌の詞はいい。
畑亜貴の詞は時に「?」なことがあるが、ハマると実に素晴らしい。

みのりんの魅力については僕が書くまでもない。
まさに透明な水の素晴らしさである。

◎夏を忘れたら
好き嫌いでいえば、僕はこういう歌をあまり好まないが、みのりんの魅力の一方がよく表れていることは確かなので、存在意義は大いにあると思う。
あくまで個人的な好き嫌いの次元である。

◎mezzo forte
みのりんの歌の勁さというのは、単にボリューム的なものだけではなくて、豊かな表現力に依るところが大きい。
この歌はその最たるもので、Aメロだけ聴くと静かなバラードかと思うが、Bメロ後半から次第に気持ちが高まってきて、サビに入ると、曲調はタイトル通りmezzo forteだが、彼女の歌はこの上もなくespressivoとなる。

歌とはメロディに乗せた感情表現であり、それが実に豊かであるところがみのりんの最大の魅力の一つだろう。

◎君がくれたあの日
女性ヴォーカルにしか表現できないものに「焦燥感」があると思う。
何かに追われているような切迫した想い、これは男性では表現できない。
それをみのりんは透明な声でこれでもかとたたみかけてくる。
ライブで聴かされたら、理性など軽く吹き飛ぶだろう。

◎truth gift
まさにハッピーエンド、という感じの歌である。
特に前曲が前曲なので、余計に効果的である。
とても優しい気持ちにしてくれる。
この歌も、みのりんの微笑む姿が眼に浮かんでくる。
ライブの最後なんかで歌われたら、確実に泣く。
恐らくファンはみなそうではないだろうか。


オタクもワールドワイドになった昨今ですが、仕事中におつかいに出掛けるときなど、Yシャツ・ネクタイ・サングラスという姿で、みのりんを聴きながらカリフォルニアをドライブしているヤツは世界にオレ一人だろう、と思うと、ちょっとした優越感に浸れます。